巧みの技
熟成肉はどのように作るのか?
最初作り出した頃は、相当失敗しました。
黒毛和牛のもも肉を相当量ダメにしてしまったことを思い出します。
*余談ですが、牛のもも肉のことを業界ではトックリと呼びます。足の腱にS缶というS字フックでぶら下げて冷蔵庫で保管するのですが、その見た目が日本酒を入れる徳利に似ているところからトックリと呼ばれるようになったそうです。
そんな失敗の積み重ねで、やっては行けないことが段々と理解できるようになっていきました。毎日のように熟成庫にアルコールスプレーとリードペーパーを持ってダメそうな菌を拭き取る作業を繰り返しました。徐々に熟成庫の香りが僕が求める香りに近づいていきました。ようやく目指していた香りになって納得いく熟成肉が仕上がってきたのは、熟成庫が完成してから2年近く経過した後でした。
熟成肉は、巧みの技と言っても過言ではない
時間をかけて重ねた経験は、今の旬熟成のとても大きな土台となりました。
こうして熟成肉を安定的に作ることに成功していきました。
それではどのように仕上げていくのか解説していきます。
熟成肉のノウハウ
1、熟成庫の設計・・・湿度コントロールをするため、冷蔵庫にインバーター機能を搭載させて、風のコントロールができるようにします。温度は4℃前後、湿度コントロールは加湿器を使用したりする場合もありますが、肉を多く入れてあげれば意外と湿度は上がっていきますので、コストを考えながら選択してください。インバーターコントロールがあれば風量を調整できますから、利水率が下がることも低減できます。
2、肉・・・牛・豚共にできる限り、骨付きの状態で用意する。
*初期段階においては、熟成させるための菌(ヘリコスチラム)が多く存在しておりません。部位肉(パーツ肉)に始めてしまうと、腐敗菌の方が優先的に肉に付着してしまう可能性が高いので、腐敗菌がより多く浮遊する冷蔵庫になってしまうので、注意してください。
3、アルコールスプレー・・・肉全体にアルコールスプレーを噴霧して腐敗菌から守ってください。このスプレーをするかしないかで結構変わります。5分程度で気化しますので、その後熟成庫に移して行ってください。
4、熟成期間・・・初回は30日間を目指してみて下さい。その間、毎日熟成庫をのぞいて悪い菌が付着してネトのようなものが表面についていないかチェックして下さい。もしそのネトのようなものが表面化していれば、アルコールスプレーを局部に噴霧してリードペーパーなどで拭き取ってください。その際、他の部位にはあまりかからないようにして下さい。ヘリコスチラムも殺してしまう可能性があります。十分注意してください。
5、状態・・・10日くらい経過してくると表面が乾燥してきますので、そうなってしまえば
もうほぼ成功です。15日目くらいには毛カビのようなものが見えてきます。これが見えて来れば80%は完成です。少しづつですが毛が赤身の所あたりからもじゃもじゃと生えてきます。日を追うごとに段々と全体に広がり脂を除いて、全体的に広がっていきます。
6、注意点・・・青いカビ、黒っぽいカビ、赤い斑点、白い斑点などが現れてきたりします。この場合はしっかりと拭き取ってアルコール消毒をして下さい。これらは、菌や酵母の類でして人体に有害なものが含まれていたりもしますので十分注意して下さい。
7、完成・・・こうしてしっかりと管理して仕上げた熟成肉は香り味わい柔らかさはなんとも言えない味わいになります。
是非、安全に仕上げた熟成肉を目指してみて下さい!
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