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執筆者の写真meat epoch 跡部美樹雄

エイジングシートの誕生 その3

検証と完成

 

従来の熟成肉は、自然浮遊している微生物を利用し肉を熟成化していましたが、そこには不要な微生物も付着する可能性がありました。


“安心・安全“且つ”美味しい熟成肉”を作るには、どうしたらいいのか・・

試行錯誤の研究でしたが、明治大学と旬熟成(運営会社:株式会社フードイズム)との共同開発(特願2016-031727)により、「エイジングシート」を開発いたしました。


このエイジングシートを使用することにより、確実にスピーディーに且つ安全に熟成肉を作ることが可能となりました。そして、「エイジングシート」による酵素と微生物を利用し発酵した肉を、私たちは、『発酵熟成肉』と命名いたしました。

 

発案から試作開発まで1年半。

実際にこの試作品を使って牛肉に巻いてみました。


サンプル:コントロール(ノーマル)

熟成期間1日目        熟成期間10日目       熟成期間20日目


サンプル:エイジングシート

熟成期間1日目        熟成期間10日目       熟成期間20日目


対象としたのは、黒毛和牛のもも肉に普通の布とエイジングシートの2種類を1日目〜20日目までエイジングしてみました。環境はヘリコスチラムが豊富にある熟成庫でエイジングしました。ちなみに通常20日肉を放置しておけば、ほぼ腐敗して匂いも悪臭が漂うほどになってしまうかと思いますが、熟成庫内であれば、その心配もなくエイジングが可能です。


上のコントロール(ノーマル)の方は、20日かけて徐々に毛カビが徐々に成長しているのが分かります。20日目前後で全体を覆ってきた毛カビ。ここまでが仕込みでして、ここから熟成が開始されていきます。さらに20〜30日置いて作るのが従来の熟成肉です。


一方、エイジングシートは1日目からヘリコスチラムが肉に100%付着させることができるので、初日からエイジングスタートです。肉のタンパク質と水を得て一気に活性化します。

10日目では完全に全体を覆って20日目には色濃くなった状態が見られます。ここで熟成完了となります。


結果、コントロールとエイジングシートを比較してみると、

1、熟成期間が1/2〜1/3に短縮ができた。    2、初期段階から良質な菌を覆ってしまうので、腐敗菌などからブロックできリスクの軽減ができるようになった。

エイジングシートには圧倒的優位性があると結論できました。

さらに、熟成肉の特徴である香りの変化?また柔らかさに違いができているのか?その検証も行いました。

検証1:香りの検証

サンプル

1、オレンジ;フレッシュ牛赤身

2、青:エイジング牛赤身

3、緑:エイジング牛脂身


グラフ左

美味しいと感じる香りで、好気化合物というものがあります。この香りは全ての肉において顕著な伸びを示しています。20日目には一番いい香りを放っているのが分かります。


グラフ右

こちらはオフフレーバー、腐った香りになります。オレンジのフレッシュ牛赤身が20日目をピークに吐出して伸びているのが分かります。フレッシュミートは腐ってしまっていると言えます。一方その他のエイジングシートを巻いた牛肉はほぼ変わらずで、特に牛脂身の方は逆に低下しています。腐らないということが分かります。


検証2:柔らかさの検証

サンプル

1、フレッシュ牛肉 0日目

2、フレッシュ牛肉 10日目

3、エイジング牛肉 10日目


グラフ左:噛んだ瞬間の硬さを測りました。

フレッシュ牛肉0日目が一番柔らかく、、エイジング10日目が一番硬いという評価になりました。


グラフ右:破断点 噛み切った点

フレッシュ牛肉は0,10日目はほぼ変わらない硬さですが、エイジング10日目は他より柔らかくなっています。10日間でフレッシュとエイジングの硬さが逆転しており、確実にフレッシュ牛肉よりも柔らかくなることが検証できました。



数回のテストを実施し、再現性の検証を行いました。


エイジングの効果も見られ、確実にできることが立証できました。


香り良し

味わい良し

柔らかさ良し


個体差はありますが、従来の熟成肉と同じような仕上がりです。


こうして、エイジングシートが誕生しました。








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